Zeroth

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現代アートの次へ

一般にマルセル・デュシャンの「泉」が現代アートの起源と言われている。デュシャンは便器に泉というタイトルをつけ、機能を剥奪し、あたらしい思考を与えた。このように思考から価値をあたえるというのはまさに先鋭的であった。
しかし、振り返ってみると、「現代」の我々は100年前のデュシャンから未だに抜け出せずにいる。様々な思考がなされ、技術が進化した現代における「現代アート」を考える。

マルセル・デュシャン「泉」(1917年)
マルセル・デュシャン「泉」(1917年)
Wikimedia Commonsより引用

AI、NFT、XR、メタバース、
WEB3時代におけるアートとは

画一的で絶対的な市場価値が危ぶまれる時代において、広がりや揺らぎを与えるものがアートであり、それを紡ぐストーリーである。
我々や社会、記憶や想い含めた情報のすべてが、デジタルの世界に移行しても残る価値を探索すべく作品を想像している。

Zeroth
第0感

「いただきます」食事の前に行うこの所作、実はラジオという離れていても同じ話題を共有できる発明によって、近年習慣化した儀式である。
どこでもだれでも離散的な相転移を行うことが容易な現在、ただ闇雲に難無く繋がるのではなく、然るべき儀式を行うことで自他境界の認識を図り、その儀式に使用する然るべきガジェットの必要性を考え、本アート、Zeroth、の制作・社会実装をする。我々は五感を通して、世界からのあらゆる信号を感覚・認識している。そして、その対比として自らの存在を初めて知覚し、自らが存在することによりはじめて世界を感じ取ることができる再帰構造である。
現在、物理的現実とXR・メタバース、此処と彼処が縫い目無く繋がろうとしている。
その結果、自分と他人、自分と世界、その境界線は曖昧となり、この社会を生きる個々が認識する「自分」の喪失はそう遠くない。
空間を分ける「暖簾」、身近な異世界との窓である「画面」と「鏡」、そして研究室にてプロトタイプを作成した「映像をメタ化するAIが組み込まれた裸眼MR鏡」により構成された本作は、世界と自分の認識の架け橋である五感の基盤、即ち「自己が私であること」を認識する感覚、第0感、の想起を行う。
メタバースの1つである鏡越しの世界、鏡像空間、を我々は無意識に自然に受け入れている。この特性を利用し、同一の空間に「鏡に映る自分」と「映像がメタ化された自分」が共存することで、自らと対峙することを可能とする。
第0感

お知らせ

2022.12.06 - 09

韓国ソウルで開催された3DCG・メディア領域の国際学会であるSIGGRAPH Asia 2022に展示しました。

2023.05.22

Association for Computing Machineryに論文が掲載されました。

三浦 亜美

Director -
三浦 亜美
株式会社ima

声楽専攻からバックパッカーを経て、複数の会社を経営。その後、ベンチャーキャピタルに籍を置き、新しい価値を生む企業への投資とサポートを行う。伝統産業とビジネス、工学を融合した"文化工学"を提唱し、株式会社ima(あいま)を2013年に立ち上げ、様々な伝統産業の継承をサポートすべく事業を行う。また"起藝家"として、自身の経験から感じた社会への疑問をアートで表現し、起業家としてビジネスを通じ課題解決を行う。

善甫 啓一

Researcher -
善甫 啓一

研究者、経営者。学士(理学)、修士(ビジネス)、博士(工学)と、開かれた大学を体現する大学教員。物理的制約から開放された無意識を活用するヒューマンインターフェース・サービスが研究テーマ。

>川村 尭之

Engineer -
川村 尭之

AIエンジニア、記憶に基づく個人認証システムを研究。

内田 弘樹

Engineer -
内田 弘樹

ハードウェアエンジニア、裸眼、MR、鏡と同室感を研究。

あとがき

三種の神器、貞観政要にある三鏡など、鏡は古より人類にとって様々な意味を持って存在してきた。また、鏡は自らを映すのみならず、鏡の国のアリスに語られるように、人々は鏡の向こうの世界を古来から夢見て畏れてきた。
鏡は自分自身と異世界を同時に映し出す象徴としてこの先も存在し続けるだろう。
株式会社ima